Google流 マネジャーの打ち手|『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』著者陣ブログ

現場で優秀な人がシニアで伸び悩む理由——組織横断を動かす3つの問い

作成者: 水野ジュンイチロ|2026年9月1日

現場のマネジャーとしては申し分なかった人が、より上のポジションに就いたとたん、なぜか力を発揮できなくなる。課長として優秀だった人が、部長になると急に評判を落とす。当人は同じように頑張っているのに、うまくいかない。この「昇進の壁」は、どこから来るのでしょうか。書籍『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』のダウンロード特典「シニア・マネジャー編」は、その正体と乗り越え方を解説しています。

現場の優秀さが、そのままでは通用しなくなる

現場マネジャーは、チームと直接関わり、業務の進行や部下の育成に携わります。これに対してシニア・マネジャー、いわば「マネジャーのマネジャー」は、複数の部門やチームを束ねる立場です。現場との距離が生まれる一方で、より俯瞰的に組織を動かせる。求められるのは、目の前の活動を管理する力ではなく、事業をどう成長させるかを本質的に「考える」力へと移ります。日々のオペレーションを見る仕事から、思考に比重を置く仕事へ——この質的な変化に気づかず、現場時代の成功パターンを持ち込んでしまうことが、伸び悩みの入り口になります。

伸び悩む人の共通点——出身部署に肩入れしてしまう

特典では、シニア・マネジャーになってつまずく人の共通点が挙げられています。プレイヤー思考から抜け出せない人、戦略と現場を切り離して考えてしまう人、意思決定がブレる人。なかでも特に多いのが、自分の出身部署にばかり肩入れしてしまうケースです。出身部署の業務には精通している一方、他部門の事情や課題は十分に理解できていない。その結果、本人は公平に判断しているつもりでも、無意識のうちに偏った意思決定をしてしまう。それが組織内の分断や派閥意識を助長していきます。だからこそ書籍は、自分の中に潜む「無意識のバイアス」を意識的に排除する姿勢が要ると説きます。

もう一つの落とし穴が、担当チームの「代弁者」になってしまうことです。責任感が強い人ほど、自分が預かる部門の利益を最優先に考えてしまう。一見それは正しく見えますが、各自が利己的に振る舞えば組織間の協力は滞り、全体が硬直します。

担当チームの「利益代表」にならず、全体最適の視点で動くことが重要です。

組織横断を動かす「3つの問い」

とはいえ、部門間で利害がぶつかる場面で「全体最適で考えよう」と唱えるだけでは、議論はまとまりません。特典で紹介されているのが、著者がGoogleで部門間の優先順位が一致しないとき、議論を始める前に関係者全員で合意していたという、次の3つの問いです。

①「私たちは何の問題を解決しようとしているのか?」
②「顧客やユーザーにとってどのような影響があるのか?」
③「公正でフェアな判断は何だろう?」

①は、根本的な原因や本質的な課題を明確にし、議論の焦点を定めるための問いです。②は、判断の軸を組織内部の都合ではなく、顧客やユーザーへの影響に置き直します。③は、どの部門にも偏らない、全体のバランスを取る基準を共有します。ポイントは、これらを議論の「前」に全員で合意しておくこと。判断基準をあらかじめ明確にしておくことで、感情や派閥の力学に流されず、透明性の高い議論ができるようになります。

全体最適は、エンパワメントで実現する

現場から離れたシニア・マネジャーにとって、自分の目で見えない領域が増えるのは避けられません。だからこそ、現地のマネジャーやメンバーを信頼し、裁量を与えて自律的に動ける仕組みを整える——エンパワメント型のマネジメントが、いよいよ欠かせなくなります。部門リーダーの自主性を引き出しながら、共通ゴールへのコミットメントを高める。この両輪が回ったとき、主体性と全体最適が同時に成り立ちます。

派閥や縄張り意識を防ぐうえで効くのも、できるだけ早い段階で「共通ゴール」を全員で握ることです。各部門が組織全体の目的を理解し、その達成に向けて協力する意識を持てば、派閥をつくる動機は自然と薄れていく。現場での優秀さを、より大きな器で活かせるかどうか。その分かれ目は、視野を「自分の担当」から「組織全体」へと広げ、他部門からの信頼を積み重ねられるかにかかっています。上位マネジメントとは、権限が増えることではなく、見るべき範囲が広がることなのです。

『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)