自分では「部下の話をよく聞く、話しやすい上司」のつもりだった。ところが匿名のフィードバックを開くと、「自分の意見がなく、この部署には戦略が見えない」という声が並んでいた——。想定と現実のギャップに、思わず言葉を失う。昇進して現場と距離ができるほど、誰も耳の痛いことを言ってくれなくなる。マネジャーほど、自分の姿が見えにくくなっていきます。

書籍『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』は、マネジャー自身の成長の起点を、正しい自己認識に置きます。

人は、自分を正しく見られない

やっかいなのは、人間には自分を甘く見積もる傾向があることです。書籍が引くのが、ダニング・クルーガー効果という認知バイアス。

能力が低い人ほど自分を過大評価しやすく……

逆に、能力が高い人ほど自分を過小評価しがちだといいます。この罠を抜ける鍵は、謙虚さと、振り返りの習慣です。そしてマネジャーは、立場上どうしてもフィードバックを受ける機会が減る。だからこそ、自分から取りにいく仕組みが要ります。フィードバックは、部下に与えるだけのものではなく、マネジャー自身が求めるものでもあるのです。

フィードバックを「求める」仕組みをつくる

会社に制度があるなら、360度フィードバックやエンゲージメントサーベイを使います。上司・同僚・部下から匿名で声を集め、数値だけでなく「なぜそう思ったか」を具体的なエピソードで裏づけてもらう。

制度がなくても、自前でできることがあります。一つはパルスサーベイ。簡単なアンケートを3か月〜半年ごとに定期的にとり、チームの温度感の変化を追う。もう一つはマネジャー・アシミレーション。進行役のもと、マネジャーが席を外している間にメンバーが良い点・改善点・期待を整理し、匿名でまとめて共有するワークショップです。いずれも、日々の会話では上がってこない本音に触れるための装置です。

「相手が受け止めた姿」が現実である

集まった声に、身構えたくなるかもしれません。けれど書籍は、受け止め方を変える言葉を差し出します。

Perception is reality.(相手が受け止めた姿こそが現実だ)

自分がどんなに良い意図だったと主張しても、部下がどう受け取ったかが、その人にとっての現実です。「他人は変えられない。変えることができるのは自分自身だけ」。だからフィードバックは、言い訳の材料ではなく、自分を調整するための情報として使います。

調整の物差しになるのが、現場との距離感です。書籍は「近すぎても遠すぎても問題が生じる」と言います。近すぎると、現場を知るがゆえに逐一介入して部下の主体性を奪う(過干渉)。遠すぎたり共感しすぎたりすると、「そんな高い目標は無理だよ」と本音を漏らして挑戦意欲を削ぐ(迎合)。フィードバックは、この距離を測り直すための鏡でもあります。

集めた声への向き合い方にも、コツがあります。満足度のスコアそのものに一喜一憂せず、自由記述の具体的な言葉に冷静に目を向ける。数字は変化の方向を見るために使い、改善の手がかりはコメントから拾うのです。なお、部長や本部長クラスへと役職が上がるほど、現場との距離はさらに広がります。書籍は、階層を飛び越えて現場と対話するスキップレベル・ミーティングや、少人数の円卓(ラウンドテーブル)といった手法も紹介しています。立場が上がるほど、自分の姿を映す鏡を、意識して増やす必要があるのです。

「なぜ、あなたが選ばれたのか」

著者・水野ジュンイチロがnoteで公開している連載漫画に、自己認識をめぐる印象的な場面があります。自分はスーパースターでもカリスマでもない、と揺れる主人公に、メンターが「なぜあなたがマネジャーに選ばれたのか、思い出して」と問いかける——というくだりです。

連載漫画『ハジメ課長』より。自分がどんなマネジャーなのかを、メンターとの対話を通じて見つめ直す場面
連載漫画『ハジメ課長』第8話「マネジメントは『終わりのない旅』である」より。noteで全編を読む

自分の強みも弱みも、多くは他者の目を通してしか見えません。フィードバックを求めることは、弱さではなく、成長し続けるマネジャーの習慣です。次の1on1で、一度だけ「私のマネジメントについて、気になることはある?」と聞いてみてください。その問いに正直に答えてもらえたなら、あなたはもう、成長の入り口に立っています。

書籍『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』
『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)