期初のミーティング。練り上げたチーム目標を発表したのに、返ってくるのは薄い反応と沈黙。誰も質問せず、どこか他人事——。書籍『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』は、この空気をこう表現します。
チームミーティングがお通夜みたいで、マネジャーはとても孤独な気持ちになります。
後日1on1で本音を聞くと、部下はこう漏らします。「言われた数字には納得していないけど、どうせ変えられないと思った」。数字だけを降らせた目標は、こうして静かに形骸化していきます。
ゴールは、マネジャーが一人で決めない
書籍は、チームには航海の「北極星」となるゴールを掲げるべきだと言います。ゴールとは向かうべき方向性・理想の状態であり、目標はそこへ前進するための具体的な基準です。大切なのは、そのゴールをマネジャーが単独で決めないこと。Googleでも、目標はトップダウンとボトムアップの擦り合わせで決まります。上から降りてくる方針と、現場が案件や実力から積み上げる数字を、対話ですり合わせていくのです。
実際のGoogleでは、全社の方針がグローバルから地域、各国へと段階的に降りてくる一方で、現場は案件数や受注確度、メンバーの在籍期間などから「これならいける」という数字を積み上げていきます。上から降りてくる期待と、下から積み上がる現実。その二つを交渉のテーブルで突き合わせ、納得のいく地点を探る。この往復があるからこそ、数字は「自分たちで決めたもの」に変わっていきます。
だからマネジャーの役割は、数字を配ることではありません。メンバーが自分の言葉で腹落ちできる「共通のゴール」へと、目標を翻訳し直すことです。
WHYから始める——「自分ごと」になる順番
そのために書籍がすすめるのが、WHY → WHAT → HOWの順で語ることです。サイモン・シネックの「WHYから始めよ」を引きながら、最初に「なぜこのゴールを目指すのか」を共有する。目的から入ることで、目標は「やらされるもの」から「自分ごと」へと変わります。
WHYを語るときは、きれいごとで済ませないことが肝心です。なぜこのゴールなのか、その背景や意味を、マネジャー自身の信念まで含めて自分の言葉で話す。そのうえで、メンバー一人ひとりにも「これは自分にとってどんな挑戦なのか」を言葉にしてもらう時間を取る。書籍はこのプロセスを、家族で夏休みの旅行先を決めることにたとえます。行き先だけを親が決めて通達しても、家族の心は躍らない。一緒に「なぜそこへ行きたいのか」を話すからこそ、旅は全員のものになるのです。
WHATを決めるときのコツは2つ。1つは、マネジャーがつくり込みすぎないこと。枠組みだけを示し、中身は本人に埋めてもらう。もう1つは、野心的な水準を狙うこと。書籍の合言葉は「Challenging but Achievable(挑戦的でありながら、なお達成可能)」。ただしこれは、マネジャーの支援がセットで示されて初めて成立します。高い目標だけを渡して支援を語らなければ、それはただの丸投げです。
巻き込みを省くと、二つの失敗が起きる
目標づくりからメンバーを外すと、決まって二つのどちらかが起こります。一つは、納得しないまま進み、当事者意識が育たず受け身になること。もう一つは、マネジャー自身が「本当に大丈夫か」と不安になり、細かく確認を重ねてマイクロマネジメントに陥ること。押しつけた目標は、部下のやる気だけでなく、マネジャーの余裕まで奪っていくのです。
「ポエム」は、なぜ響かなかったのか
著者・水野ジュンイチロがnoteで公開している連載漫画に、この失敗が描かれています。主人公が「笑顔と数字で世界を変える」という威勢のいいビジョンを掲げるものの、思い入れを共有していないメンバーには「勝手に押しつけられても」と受け流されてしまう。そして主人公は「自分が間違っていた」と気づくのです。
どれだけ立派な目標も、つくる過程に相手がいなければ、ただの号令で終わります。次の目標設定では、完成品を配る前に、「なぜ」を一緒に考える時間を先に取ってみてください。