チームには、放っておいても成果を出すエースがいる。一方で、まだ結果につながらないメンバーもいる。この二人を、同じ目標、同じ物差しで扱うのが「公平」なのだろうか——。マネジャーなら一度は立ち止まる問いです。えこひいきは避けたい。けれど全員を横並びにすれば、優秀な人ほど物足りなさを感じて離れていく。この板挟みに、書籍『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』は一つの答えを示しています。
「全員を平等に」が、優秀な人から先に去らせる
書籍は、多くのマネジャーが抱えるこの疑問を、正面から言葉にしています。
できる人とできない人がいて当然なのに、全員を平等に扱っていいのか?
著者は、かつて数字だけで人を評価し、レッテルを貼って満足していた時期があったと率直に振り返ります。しかしそのやり方では、できる人でさえも疲弊し、最後は誰も残れない場所になってしまう。人を成果の数字だけで裁き、取り替え可能なパーツのように扱うことは、非人間的ですらあると書籍は言い切ります。全員を機械的に「平等」に扱うことは、公平なようでいて、実は誰の成長にも向き合っていないのです。
答えは「パーソナライズされた挑戦」
ではどうするか。書籍がGoogleのマネジメントの核心として挙げるのが、一人ひとりに合わせた関わり方です。
すべてのメンバーが、それぞれ自分にパーソナライズされた挑戦を持つこと。
ハイパフォーマーには、より難易度の高い目標や新たな責任を与え、さらなる成長を促す。挑戦のない環境に置かれた優秀な人は、退屈して組織を離れてしまうからです。一方、まだ成果を出せていないメンバーには、甘やかすのでも、ラベルを貼って切り捨てるのでもなく、「あなたが今、乗り越えるべき課題は何か?」を一緒に考える。同じ物差しを全員に当てるのではなく、それぞれに違う挑戦を手渡す。これが、書籍の言う本当の公平さです。
現場での使い方——「その人自身の成長軸」で話す
この考え方を1on1や評価面談に落とし込むときの鍵が、比較の軸をずらすことです。書籍は、他人と比べた優劣ではなく、「その人自身の成長軸」で会話することを勧めます。「Aさんに比べて」ではなく、「先月のあなたと比べて」「あなたがなりたい姿に対して」と語る。この一言の違いが、メンバーを「順位づけの対象」から「成長の主体」へと変えます。
もう一つ大切なのが、評価と成長を切り分けることです。評価はあくまで、一定期間の成果を切り取ったスナップショットにすぎません。それを突きつけて終わりにするのではなく、「次にどう伸びるか」という成長の対話は、別の時間として持つ。評価で人を格付けする場と、可能性を信じて伴走する場を混ぜないことが、エースにも、伸び悩む人にも効きます。
こうしてパーソナライズされた挑戦を渡し続けると、メンバーの側に「ここでなら成長できる」という感覚、すなわち帰属意識が育っていきます。書籍は、多様な人が活躍し、全員が意見を歓迎され、意思決定の背景が透明で、チームに帰属意識があり、そこから新しいアイデアが自然に生まれる——この状態を「成果を生む場」の条件として挙げます。一人ひとりに違う挑戦を手渡すことは、その場をつくるための、いちばん具体的な一歩なのです。エースにとっては「まだ伸びられる場所」に、伸び悩む人にとっては「見捨てられていない場所」になる。同じチームが、それぞれにとって居場所になります。
成果と心理的安全性は、両立できる
「厳しく成果を求めれば場がギスギスし、居心地よくすれば成果が緩む」——多くのマネジャーは、この二つを両立不能なトレードオフだと感じています。しかし書籍の立場は明快です。
チーム内に能力の差があるのは当然のことです。
大切なのは、その差を見て見ぬふりで放置することでも、優劣のラベルで固定することでもなく、それぞれに合った挑戦を設定し、全員がいずれハイパフォーマーになれるよう、成長の道筋を一緒に描くことです。メンバーは、マネジャーが誰に対しても公平に接しているか、自分の成長を本気で支援してくれているかを、驚くほどよく見ています。一人ひとりに向き合い、フェアでありながら、その人の可能性を信じる。この姿勢こそが、成果と心理的安全性を両立させる「成果を生む場」の土台になります。できる人を特別扱いするのでも、全員を横並びにするのでもない。一人ひとりを、違うやり方で本気にさせる。それがエースも新人も辞めないチームのつくり方です。