Google流 マネジャーの打ち手|『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』著者陣ブログ

評価と育成を混同していないか——人事評価とパフォーマンス・マネジメントの分離

作成者: 水野ジュンイチロ|2026年8月9日

部下の成長を願ってフィードバックしたはずなのに、相手は身構え、まるで査定の面談のような空気になってしまう。あるいは、1on1が毎回目の前の業務相談で埋まり、部下の将来やキャリアの話には一度もたどり着けないまま四半期が終わる——。育成に悩むマネジャーの多くが、この二つに心当たりを持っています。

書籍『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』は、その原因の一つを、評価と育成の混同に見ています。

人事評価は「過去」、育成は「未来」

書籍は、よく似た二つの営みを、はっきり分けます。

人事評価は「過去を測る」ものであり、パフォーマンス・マネジメントは「未来をつくる」ものなのです。

人事評価は、一定期間の成果や行動を振り返り、組織としての処遇を決める仕組み。一方のパフォーマンス・マネジメントは、目標設定・実行支援・フィードバックを繰り返し、メンバーの成長を支える仕組みです。両者を混ぜると、せっかくの成長のためのフィードバックが「査定のための話」になり、効果を失う。だからGoogleも、かつては同じ時期に行っていたこの二つを、反省をふまえてあえて切り離しています。

育成は「3つのステージ」で設計する

では、未来をつくる育成は何をするのか。書籍は3つのステージで整理します。1つ目は立ち上がりを支える(オンボーディング)。ここでの原則は「最初から正解を与えない」こと。知識を詰め込むのではなく、本人が自分の言葉で語れるまで考え抜かせます。支える柱は3つ——目指す姿(ゴールイメージ)を共有し、小さな実践とフィードバックを早いサイクルで回し、つまずいたときの心理的な支えを用意する。2つ目は成果を伸ばす(期待値設定とフィードバック)。3つ目は未来を描く(キャリア・ディスカッション)です。

2つ目の起点になるのが、期待値設定=「成功の定義」のすり合わせです。多くの職場は「やること」のリストで終わりますが、大切なのは「どうなったら成功か」を、いつまでに・何を・どのように、と事前に握ること。そのうえで日々のフィードバックを重ねます。フィードバックの具体的な型(SBI・2×2フィードバック)については、別記事「部下へのフィードバックの伝え方」で詳しく解説しています。

キャリアの話は、意識して時間を取る

3つ目のキャリア・ディスカッションは、放っておくと後回しになります。1on1が目先の業務で埋まってしまうからです。だからこそ、キャリア専用の時間を意識して設ける。GROW(Goal・Reality・Options・Will)や、Will・Can・Mustといった枠組みを使いながら、「今の仕事で一番楽しい瞬間は?」といった、業務の枠を外す問いで本人の価値観を引き出します。

重要なのは、メンバーが「自分でキャリアを選び取っている」という感覚を持つことです。

数年で巣立つ相手にも、本気で向き合う。その姿勢が、目先の成果を超えた信頼を育てます。さらに一歩進んだ育成が、次世代リーダーを育てることです。書籍は、高い期待を言葉で伝え、人を巻き込む難しい課題をあえて任せ、その挑戦で失敗しても評価にはネガティブに響かない——そんな安全な環境を用意することを挙げます。安心して背伸びできる場があってはじめて、人は一段上の役割へと育っていくのです。

「約束する」と言えるか

著者・水野ジュンイチロがnoteで公開している連載漫画に、この向き合いを描いた場面があります。主人公が部下に向かって、メンバーが互いに気にかけ、気軽に相談できるチームに変えると「約束する」と宣言する。すると部下は、では自分のキャリアの話にちゃんと向き合ってくれるのか、と静かに問い返すのです。

連載漫画『ハジメ課長』第6話「Google流!部下を爆走成長させるメソッド」より。noteで全編を読む

評価は評価として、きちんと向き合う。そのうえで、育成は査定から切り離し、部下の未来のために時間を使う。この線引きができたとき、フィードバックもキャリアの対話も、ようやく本来の力を発揮しはじめます。評価で人を裁く時間よりも、育成で人の可能性に賭ける時間を長く取る。その意識のもち方ひとつで、部下の伸び方は驚くほど変わっていきます。

『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)