「これ、やっておいてね」と軽く頼んだ仕事。次に確認したら、何も進んでいない。理由を聞くと、返ってくるのは「何から手をつけていいか分からなくて」。思わず「早く言ってよ」と言いたくなる——。目標は共有したはずなのに動かない。その原因は、部下のやる気ではなく、HOW(どう進めるか)まで伴走しきれていないことにあるかもしれません。

書籍『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』は、目標を掲げたあとのマネジャーの仕事を、管理ではなく伴走だと言います。

HOWを支える「3つの軸」

伴走といっても、手取り足取りではありません。書籍が挙げる支援の軸は3つ。①仕組み・指針づくり、②役割の明確化、③フィードバックと改善です。これらは進捗を管理する道具ではなく、メンバーに自律性を与え、成長を促すための土台として機能します。

その出発点になるのが、キックオフミーティングです。四半期の初めや新しいプロジェクトの開始時に、全員で議論する。WHY(なぜやるか)やゲームプランはマネジャーが語り、具体的なアクションプランは現場のメンバー自身に考えさせ、発表してもらう。そこで決めたことは「最終版」として固定せず、環境の変化に応じて何度でも上書きする「生きた文書(Living Document)」として扱います。

OKRとPOC——当事者意識を引き出す仕組み

掲げたゴールを組織で運用していくための道具が、OKR(Objectives and Key Results)です。目指す姿(Objectives)と、その達成度を測る指標(Key Results)をセットにして可視化し、定期的に目線を合わせていく。OKRは目標を新たに「決める」ものではなく、すでにあるゴールを「運用・管理する」ための仕組みだ、というのが書籍の整理です。

もう一つ、当事者意識を大きく変えるのがPOC(Point of Contact)の指名です。「このプロジェクトのPOCは〇〇さん」と明言する。与えられた仕事をこなす担当者と違い、POCは自ら段取りし、周囲を巻き込んで進める攻めの立場になります。名前がつくだけで、人の関わり方は変わるのです。

マネジャーは「焚き火を世話する人」

これらの支援を、書籍は一つの比喩でまとめます。

マネジャーはその焚き火を絶やさぬように世話をする人なのです。

やることは3つ。火を着け、風を送る(方向づけと動機づけ)。薪をくべ、配置を変える(「これはやらない」という判断も含む)。そして灰を取り除く(個人では動かせない障害を、マネジャーが自ら除く)。自分が主役として燃えるのではなく、チームの火を絶やさないことに徹する。それが伴走の姿です。なお、環境が変わればプランは柔軟に変えます。ただし変えないものが一つだけある——「目指すべきゴール(北極星)は変わらない」。この一点だけは、繰り返し伝え続けます。

ときには、ゼロから問い直す

伴走は、無難な一歩を隣で見守ることではありません。書籍は、現状の延長で考えるのをやめ、ゴールから逆算してゼロベースで発想する「ラディカルシンキング」を勧めます。今のやり方を10%改善するのではなく、10倍(10X)の成果を狙うとしたら、何をやめ、何を始めるか。マネジャーの役割は、部下の代わりに答えを出すことではなく、こうした大胆な問いを一緒に立て、挑戦の火を大きくすることです。日々のミーティングでも、司会や議事録、タイムキーパーといった役割をあらかじめ決め、プロジェクトごとにPOCを置く。小さな仕組みの積み重ねが、伴走を支えます。

「持ち味を活かせ」

著者・水野ジュンイチロがnoteで公開している連載漫画に、伴走するマネジャーの姿が描かれています。主人公が、メンバー一人ひとりの興味や強みに合わせて新しい挑戦の場をつくり、「持ち味を活かせ」と背中を押していく——という場面です。

連載漫画『ハジメ課長』より。メンバーの興味や強みに合わせて挑戦の場をつくり、持ち味を活かせと背中を押す場面
連載漫画『ハジメ課長』第4話「"北極星"でチームを導く」より。noteで全編を読む

任せることと、放り出すことは違います。ゴールは変えずに、道中の火を絶やさない。「早く言ってよ」と嘆く前に、火が消えかけていないかを隣で確かめる。その伴走があってはじめて、メンバーは自分の足で走り出します。そしてそのとき、マネジャーもまた、目の前の作業に追われる立場から解放されるのです。

書籍『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』
『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)